こんにちは。エイチームライフデザイン技術開発室の鈴木です。
近年ChatGPTをはじめとする生成AIが登場し、ビジネスや生活にも大きな影響を与えています。そんな生成AI時代に備えて、「全社員が生成AIの効果的な使い方を理解し、業務で日常的に活用することで、生産性向上と新たな価値創造を実現する」を目的とし、エイチームグループ内でAI研修を実施しました。
エイチームで行われていたAI研修について
エイチームグループでは、2020年頃より全社員を対象としたAI研修を実施しておりました。
このAI研修の内容は、テーブルデータを中心として単回帰分析から始まって機械学習の理論を丁寧に説明するような内容になっていました。それらの技術や知識は今でも有効な場面は数多くあります。しかし2022年にStable DiffusionやChatGPTのような高性能な生成AIが登場して以来、「AI」によってできる事は大きく広がりましたが、その後もAI研修の内容はそのままになっていました。
「AI」という広い分野を俯瞰した時に、エイチームグループの多くのスタッフにとって優先して学ぶべき領域は、生成AIが普及したこの数年間で大きく変化していると考えました。高度な専門知識を必要とせずとも様々な場面で活用できる生成AIの存在は大きく、スタッフの誰もが使いこなせるようにする事の重要性を感じていました。
そこで、これまでのAI研修の内容を全面的に見直し、生成AIの技術を中心として再構築しました。以前までの研修は「AI研修Ver.1」という形で残しつつ、新たに生成AIの話題を中心に実践的な内容を盛り込んだ「AI研修Ver.2」を実施することにしました。
準備
今回の研修では、グループ各社からAIに知見のある有志を募って講師陣を結成しました。それぞれ所属組織や得意領域が異なるため、社内の様々なAI活用事例を持ち寄ったり、AIを使う上で大切な社内のルールなどの情報をまとめることができました。
研修の内容は、AIの基礎概念を学ぶ座学的なものから、ChatGPTを用いたハンズオン形式のものまで幅広く用意しました。特に、「生成AIを実際に利用するような研修内容にして欲しい」という要望を複数頂いていたため、手を動かしてChatGPTなどにプロンプトを入力して、業務上のタスクを解決するような内容を複数盛り込みました。
また研修の準備にあたって、政府が公開している『生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~』(出典:総務省ホームページ https://www.soumu.go.jp/use_the_internet_wisely/special/generativeai/)の資料は、初歩的な内容や最低限の注意点などが簡潔にまとまっており、大部分を参考にさせていただきました。
実際には大きく3つのパートに分けた構成にしました。
- パート1: AIとは?
- 生成AIに限らず「AI」「人工知能」とは何か、その中身や構造の概要を説明しました
- パート2: 生成AI基礎
- 世の中で有名な生成AIの紹介や、業務で利用するうえでの注意点やルールなどを説明しました
- パート3: 生成AI応用・実践
- 社内で利用準備が整っている複数の生成AIサービスを対象に、実際の業務を想定したハンズオンや社内のAI活用事例を紹介しました
参加形式はGoogle Meetを用いたオンライン会議とし、後日動画を視聴できるよう録画も行って展開しました。 資料はGoogleスライドやドキュメントで作成しました。座学中心のパートではスライドで視覚的に表現するのが効果的ですが、ハンズオンでは実際に使うURLやプロンプトをコピーして操作する都合上、ドキュメントでの資料作成が好都合でした。
研修の準備に掛かった期間は約3ヶ月でした。これはAI研修のアップデートの必要性に気づいてから、企画として概要を設計して、講師を担当してくれるメンバーを集めて、グループ全体で行うことについて経営会議に話を通して、実際に研修を実施するまでの期間です。3ヶ月というのは時間が掛かり過ぎたとは思っていませんが、その間にも新しいモデルが登場してできる事が増えたりして、生成AIを取り巻く環境の変化の速さを実感しました。
研修の内容の例
実際の研修の内容を少しだけ紹介します。
ここでは誤った情報が出力される可能性があるプロンプトとして「エイチームの代表取締役社長は誰?」1を実際に入力してもらい、そのリスクを紹介しました。また対処方法として、各種生成AIを検索ツールと連携してエイチームの公式サイトに基づいた回答を得る方法について紹介しました。
結果
研修後のアンケートでは、「研修の内容は分かりやすかった」「AIをもっと使いたいと思った」といった肯定的な回答が8割を超え、好評をいただきました。
一方で、「研修の内容は既に知っている内容だった」「研修の前から十分使っているから、(生成AIの利用が)もう増える余地は無い」という意見も多く頂き、スタッフのAIに対する理解度やニーズが多様であることを再認識しました。これに対しては、今回のような全社一律の研修という形だけですべてを解決するのではなく、社内の様々な組織でAIに関する情報共有やディスカッションの機会を増やしていく重要性を感じました。
また、参加形態としてリアルタイムで参加した方と後日動画を視聴した方の割合は半々であり、どちらの形式も需要がありました。これはエイチームグループの全ての職種を研修の対象としたため、シフト制勤務など当日その場での参加がそもそもできないようなスタッフも多くいたためです。 今回の研修はハンズオンも含むためリアルタイムでの参加を主として設計してしまったのですが、社内のすべての職種を対象として、AI活用の余地がもっとあるような分野にもAIを広めていくには、様々な参加方法を想定する必要があったという気付きがありました。幸いアンケート上では、参加形態の違いによる理解度に大きな差は見られませんでした。
おわりに
エイチームグループの全社で行っていたAI研修の内容を、生成AI中心に再設計しました。 近年の生成AIを取り巻く状況は急速に変化しています。それらの技術を社内の様々な場面で活用し、事業や組織をより成長させるためには、知識や技術のアップデートを組織的に行っていく事の重要性を感じました。
- このプロンプトを実際に入力すると、誤情報が含まれやすいモデルとちゃんと正解できるモデルに分かれます。↩